YouTubeの子ども向け規約変更は全てのYouTuberに影響あり キッズ系でなくとも広告や機能が制限される可能性

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2019年11月12日、既に告知されていたYouTube上における「子ども向けコンテンツ」に関する大幅なルール変更について、更なる詳細が公開された。すべてのYouTuberに申告義務が課せられるなど、キッズ系YouTuber以外にも大きな影響を与えることになる。

 

 

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子ども向けコンテンツに関する変更点 

 

 

YouTubeが今回発表した内容は、2020年から適用される「子ども向けコンテンツ」に関するデータ収集の制限と影響について、その具体的な内容を今までより詳細に説明するものとなっている。

代表的なものとして、YouTube上の子ども向けコンテンツには「パーソナライズド広告の停止」「コメント機能などの制限」が実施されることになる。

また、すべてのYouTuberが「自分が投稿している動画が子ども向けか否か」を申告する義務を負うことになった。これは、いわゆるキッズ系YouTuberといった主に子ども向け動画を投稿しているYouTuberだけではなく、YouTubeに動画を投稿している"すべて"のYouTuberがその義務を負っている。

以下、それぞれ詳細を見ていく。

 

1.子ども向けコンテンツ規制の理由

 

YouTubeが一連の変更を実施する理由は、アメリカ連邦取引委員会(FTC)から指摘された法律違反の和解条件となっているためだ。 

▼参照記事:『Google、YouTubeの児童保護法違反でFTCに1億7000万ドル(約180億円)の和解金』(2019年9月5日)

YouTubeが子ども向けチャンネルの視聴者に対し、保護者の同意を求める通知などを表示せずにcookieを使い、個人情報を収集していたことについて、アメリカ連邦取引委員会が「児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)に違反する」と指摘。その和解の条件として、今回の一連の変更を実施(ちなみに1億7000万ドルの制裁金も支払っている)。 

問題となったCOPPAはアメリカの法律だが、COPPAとアメリカ以外の同様の法律について確実に準拠するため、アメリカ以外でも今回のルール変更を適用することとなったようだ。

 

2.子ども向けコンテンツとは

 

今回の変更における最も重要なポイントとして、「そもそも何が子ども向けコンテンツにあたるのか」という子ども向けコンテンツの定義が問題になるが、この点についてYouTube側の説明はやや曖昧なものとなっている。

子ども向けコンテンツの定義については、YouTubeヘルプで触れられている。

YouTubeヘルプの『コンテンツが子ども向けか動画を判断する』というページでは、「子ども向けに制作されたとみなされるコンテンツ(子ども向けコンテンツ)に関する指針を以下に示しますが、YouTube は法律上の助言を行うことはできません。動画がこの基準を満たしているかどうか不明な場合は、法律の専門家に相談することをおすすめします。」と説明されている。

要するに、今回の変更は法律上の問題なのでYouTube側から断言することはできず、あくまでアメリカ連邦取引委員会が提供する指針を参考にしたもの、ということらしい。

そこで示されたのが、以下のようなものである。

 

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(YouTubeヘルプより抜粋)

 

【子ども向け動画とは】

  1. 以下に記載する要素を踏まえ、主な視聴者として子どもを対象としている。
  2.  子どもを主な対象としていないものの、以下に記載する要素を踏まえ、子どもを対象としている。

 

【子ども向けかどうか判断される要素の一例】

  1.  動画のテーマ(例:未就学児向けの教育コンテンツ)
  2. 子どもの視聴者を想定して制作された動画であるか、また実際に子どもが視聴している
  3. 子役や子どものモデルが含まれる動画
  4. アニメや漫画の登場人物など、子どもの興味を引くキャラクターや有名人、おもちゃが含まれる動画
  5. 子どもが理解できることを想定し、使われている言葉や表現
  6. 芝居(ごっこ遊び)、簡単な曲やゲーム、早期教育など子どもの興味を引くアクティビティが含まれる動画
  7. 子ども向けの曲、物語、詩が含まれる動画
  8. 動画の視聴者に関する経験的証拠など、動画の視聴者を特定する際に役立つその他の情報

 

色々と具体的なケースを示してくれているものの、実際に判断するとなればかなり難しい。 後述するように「子ども向けか否か」を最初に判断するのは動画を投稿するYouTuber自身だが、YouTube運営側も機械学習による自動システムで子ども向けコンテンツの判定をすることになっている。

まず間違いなく、理不尽な判定が下されることもあるだろう。 

近いうちに様々なYouTuberから「なんでこの動画が子ども向けなんだ!」といった不満が投稿されると思うので、ある程度情報が集まり次第、実例を追記する予定。 

 

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3.子ども向けコンテンツの申告義務

 

今後、すべてのYouTuberに対し「自分の動画が子ども向けであるか」を申告する義務を負わせることになった。

申告の対象となる動画は、既に投稿してある動画を含めたすべての動画。仮に1,000本の動画を投稿しているのであれば、その1,000本すべてをチェックする必要がある(ライブ配信のアーカイブも含む)。 

子ども向けの設定方法は、いくつかある。 

自分のチャンネル自体が子ども向けコンテンツのための場であると考えた場合、チャンネル全体で一括して子ども向けの設定をすることができる。 

動画を単体で設定する場合、新規の動画はアップロード時に設定ができ、既に投稿済みの動画は動画の一覧から任意に更新できる。 

こうした申告はYouTuber自身が法律を遵守するために義務化されたものだという。YouTube運営側の説明には「自分のコンテンツについての設定を正しく行わなかった場合、FTC またはその他の規制当局に法令遵守義務違反とみなされたり、YouTube アカウントになんらかの措置が取られたりする可能性があります。」という、おどろおどろしい文言も記載されている。 

実際にそこまで悲惨な目に遭う可能性はまずないと思われるが、各YouTuberは一応ちゃんと対応したほうがいいだろう。

なお、YouTuber自身による申告とは別に、YouTube運営側が機械学習による自動システムによって子ども向け動画であるかの判断をすることになっている(間違いなく誤判定の温床ではあるが)。 

 

4.パーソナライズド広告の停止とは

 

子ども向けコンテンツには、パーソナライズド広告が表示されなくなる。

パーソナライズド広告とは、それぞれのユーザーの年齢や性別、住んでいる地域、過去に使用した検索キーワードやサイトの訪問履歴などに基づいて決定される広告を指す。

ユーザーのデータを収集・分析することで、より関連性の高い内容の広告を表示することができ、広告を出稿する広告主と広告を見るユーザー側双方が一定のメリットを享受できる。 

YouTuber側からすれば、パーソナライズド広告によって日々の収益性がより良いものとなっていたというわけである。 

しかし、このパーソナライズド広告が子ども向けコンテンツには表示されなくなり、代わりにパーソナライズされていない広告が表示されることになる。 

具体的には現在の検索キーワードなど、ユーザーの過去の行動に基づいていない広告となり、当然ながら収益性は今までより悪くなるといわれている。 

YouTube運営側も「子ども向けコンテンツではパーソナライズド広告が表示されないと、コンテンツを子ども向けとして設定した一部のクリエイターにとって収入が減少する可能性があります。」(YouTubeヘルプより)と断言している。

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(YouTubeヘルプより抜粋)

 

5.各種機能の制限


子ども向けコンテンツでは、いくつかの機能が制限されることになる。

具体的には「コメント」「チャンネルメンバーシップ」「チャンネルの画像・ロゴの透かし」「情報カードまたは終了画面」「チャット」「ミニプレーヤーでの再生」「Super Chat(スパチャ)」「再生リストに保存」などの機能である。 

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(YouTubeヘルプより抜粋)

チャンネル自体を子ども向けに設定した場合、「ストーリー」「コミュニティ」「通知ベル」なども使えなくなる可能性があるようだ。

(ただ、YouTube運営側の説明には「現在から2020年1月までの期間、コンテンツを子ども向けとして設定すると」とあり、一時的な措置なのかいまいちわかりづらいので、詳細が分かり次第、追記予定。)

 

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既に自動システムによる審査は始まっているらしい

 

より具体的な変更の内容が発表されたばかりだが、既に自動システムによる審査は開始されているようだ。

 

 

明らかに子ども向けではない動画でも、アニメっぽい画像が使われていただけで子ども向けと判定されてしまったケースも早速あるらしい。混乱は必至だが、YouTube運営による真摯な対応を願うしかない。

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